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【「100年筋肉」を鍛えよう】
巽 崑さん、筋トレでスクワットが一番得意だそうですね。見せてもらってもいいですか。
大村 いいですよ。先生も一緒にやりましょか。1、2……。
巽 背筋が伸びたきれいなフォームですね。息も全然上がらない。膝に痛みはないですか?
大村 おかげさんでありません。膝痛を治す先生に何ですが(笑)。
巽 僕を呼んでもらった意味があまりないかもしれないな(笑)。
脈を取らせてもらっていいですか? 失礼します。ああ、太いな。
大村 何が太いの?
巽 血流の拡張の大きさと勢いがあるんです。
漢方の表現でいうと気血、
つまり人間の体を動かす目に見えないエネルギーと血が
充実した太い脈をされていて、不整脈もない。
これなら108歳まで生きます。
大村 専門家にそう言うてもらったら心強い。
僕は今91歳。102歳まで生きようかなと思っていたんですけど、
目標を変更しないと。
【筋トレは86歳でも間に合う】
大村崑さんは1931年、兵庫県生まれ。
テレビ黎明期から「頓馬天狗」などのコメディ番組やCMで一世を風靡。
近年はライザップのCMに出演し、86歳で始めた筋トレについて書いたエッセイ
『崑ちゃん90歳 今が一番、健康です!』(青春出版社)が話題になっている。
巽一郎さんは1960年、大阪府生まれ。
整形外科医で膝関節手術の第一人者ながら、食事制限や筋トレを指導する「保存療法」で3000人以上の膝痛を治してきた。2019年に出版した『100年足腰』(サンマーク出版)は10万部を突破。スーパードクターと謳われる。
巽 崑さんの本にあるビフォー・アフター写真はびっくりしますね。
筋トレを始めた86歳の頃と、90歳とでは別人のようです。
大村 86歳の頃は腹囲が92センチありました。
そこから週2回ジムに通うようになって、今朝測ったら77センチでした。
巽 腹筋がなくなるのが一番まずいんです。以前のお腹は腹筋よりも脂肪が多い。
筋肉は使わないと脂に変わり、たるんでいきます。
日本人のほとんどは腹筋を意識して鍛えていないからたるんでいますね。
大村 僕も5年前は日本人のお腹の典型だったということやね。
巽 お腹がたるんでくると、腰椎が前後にグラグラします。
腹筋の押さえがないから。腹と腰の間にある背骨の中には、
脳から脊髄神経が通っている脊柱管というものがあります。
この管が、ズレ出てきた腰椎によって圧迫されるんです。
脊柱管狭窄症って知っていますか?
症状としては足がしびれたり、膝がカクッと崩れたりするんですけど。
大村 聞いたことあるな。
巽 その原因で多いのが、たるんだお腹です。では腹筋をどう鍛えればいいか。
一般にイメージするような、
仰向けになって上半身を起こす動きはあまりおすすめできません。
大村 ジムでもやらないですね。
巽 高齢の方も取り入れやすい体操を一緒にやってもらってもいいですか。
主な手順は次のとおりです。
【簡単にできる筋トレのやり方はコレだ】
巽 主な手順は次のとおりです。
(1) 背筋を伸ばして立つか、椅子に座る。お腹に手を置く
(2) 呼吸しながら、腹筋に力を入れておへそをゆっくりと引っ込めていく。
お腹の皮を背中にくっつけるイメージで行う
(3) 腹筋に力を入れたまま肛門をキュッとしめ、
5秒数えたらハーッと息を吐いて全身の力を抜く
(4) これを10回繰り返す
大村 「お尻の穴を締めてください」はジムでもよう言いますわ。
巽 お尻の穴を締めるのはウンコを落とす時の筋肉で、
骨盤底筋群といいます。これが衰えると内臓を支える力が弱くなるんです。
大村 この体操は簡単でいいね。
巽 腹筋がない人にはこれが一番おすすめです。
脊柱管狭窄症の症状のあった人で、
この体操で脊椎が前後にグラグラしなくなり、
症状が改善した方がいらっしゃいます。
大村 鍛えはじめるのに遅いということはないからね。
巽 崑さんは筋トレを始めて4年でウエストを15センチも絞られたんですね。
でも、崑さんの変化で最も大事なのは、頭の位置です。
今は頭が骨盤の真上にあるけど、以前は骨盤より相当前へ行っていたでしょう。
これが一番あかんのです。
大村 どうあかんのですか?
【正しい姿勢を身につける】
巽 骨盤より前に出た頭を支えるために、
僧帽筋という背中から首を支える筋肉が引っ張られます。
筋肉が緊張することで肩がこるんです。崑さんの肩を触っていいですか……
今はものすごく柔らかい。
大村 昔は出張先で、
マッサージさんを呼んで指圧してもらわなかったら
寝られなかったほどだったんですよ、肩こりで。
それが今はすっかりなくなりました。
巽 マッサージでこりは一時的に和らぎますが、
その原因は解消されていないのですぐ再発します。
崑さんの肩こりがなくなったのは、原因だった頭の位置が良くなったからですよ。
骨盤の真上に頭があって、脊椎はきれいにS字カーブができている。
90代というのが信じられへんほどです。
大村 ジムのトレーナーが、壁を使って姿勢を整える方法を教えてくれたんです。
後頭部と肩甲骨とお尻の3点を壁につけるんです。
巽 壁によりかからず、3点だけ壁に触れるように立つわけですね。
大村 僕は家でもよくこの方法で1〜2分立って、横から鏡でチェックしています。
最初はそっくり返ったように見えるけど、
これが正しい姿勢だと刷り込むわけです。
講演の時には必ず楽屋の鏡で確認して。
巽 さすがですね。
大村 呼ばれたらそのままの姿勢で舞台に出ていきます。
歩き方は、かかとで歩いてつま先で伸びる。
この歩き方、子どものうちはみんなできているけど、
大人になるとつま先で歩くようになりますね。
巽 それも頭が前に出て、前傾姿勢になっているせいです。
バランスを取るために腰が後ろに引けて、骨盤が後傾してつま先から着地する。
僕は「ニワトリ歩き」と呼んでいますが日本人に多いです。
歩けなくなる入り口です。
大村 僕も危なかった。85歳まではそういう歩き方でした。
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今回は俳優・コメディアンの大村崑氏、一宮西病院整形外科部長の巽一郎氏による対談「『100年筋肉』を鍛えよう」の一部を転載します。(月刊「文藝春秋」2023年3月号「総力特集 不老長寿への挑戦」より)
元記事→《ビフォー・アフター写真にびっくり》「腹筋がなくなるのが一番まずい」“100年筋肉”を鍛えるオススメ体操 | 文春オンライン (bunshun.jp)
全文は、月刊「文藝春秋」2023年3月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
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