長引くコロナ禍、原因がよくわからないまま
首や肩、腕、腰などに痛みを感じる人が増えました。
マッサージや湿布など自己流で対処しても、いつのまにか慢性的な痛みに発展したり、
実は別の疾患が隠れていたりすることも……。
今回は、横浜町田関節脊椎病院の越宗幸一郎院長が、
この「痛み」の正体と患者増加の原因について解説します。
【いま、「頸肩腕症候群」の方が増えている】
長引いたコロナ禍で、首や肩、腕、腰を痛める人が増えています。
その症状のひとつとして知っておきたいのが、
「頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)」です。
首周辺や肩、腕、背中、手首、手などの部位に痛みやこり、
痺れなどの症状が現れた状態のことをいいます。
レントゲンやMRIなどの検査を行っても特に異常が見つからず、
他の疾患の疑いも否定される場合に医学的に診断される疾患です。
主に次のような症状がみられます。
・首から肩の痛み、頭痛
・腕や手が冷たくなる
・脱力感がある
・腕が重く感じる
・運動をすると痛みが増す
・じっとしていても痛みがある
頸肩腕症候群は、神経や血管が圧迫されたり、
筋肉に過剰な負荷がかかったりすることによって起こります。
多くの場合、パソコン作業などで長時間にわたり悪い姿勢をとり続けたり、
無理な姿勢で作業を続けたりした際に生じやすいです。
特にコロナ禍で頸肩腕症候群と診断される人が増え、
長期にわたってリハビリをしたり、薬物治療などを受けたりする人も少なくありません。
【コロナ禍で患者が増加した「3つの原因」】
ではなぜ、コロナ禍にともない首、肩、腰などに不調を感じる人が増えたのでしょうか。
原因としては、次の3つが考えられます。
1.コロナ禍のストレス
ストレス状態が続くと筋肉が過緊張の状態になり、
血管が収縮して肩こりや腰痛などを引き起こします。
さらに、肩こりや腰痛などが続くと、その痛み自体がストレスとなり、
ますます症状を悪化させるという悪循環に陥ります。
2.運動不足による筋力の衰え
リモートワークにより毎日の通勤がなくなったり、
長い自粛期間が続いたりしたことで、運動不足になりがちです。
筋力が衰えることによって、姿勢が悪くなり、肩こりや腰痛を引き起こします。
3.テレワークでの筋肉緊張
テレワークが普及したことにより、自宅で長時間パソコンに向かう時間が増え、
首や肩、腰などの筋肉が緊張し、痛みを発します。
パソコン作業に向いていない場所(自宅のローテーブルなど)
で長時間仕事をすることもよくありません。
【あなたの姿勢は大丈夫?簡単にできる「セルフチェック」】
ここで、自分の身体が気づかぬうちにバランスを崩していないか、
簡単なセルフチェックをしてみましょう。
壁に頭、背中、お尻、かかとを付けて、無理せず自然に立ってみたとき、
あなたの姿勢は次の図のどれにもっとも近いでしょうか?
【痛みを放置すると「メンタル不調」の原因に】
首や肩の痛みが日常的に続いているために、
「それほど気にならなくなってしまった」という人も多いのではないでしょうか。
しかし、そうした漫然とした不調を放置しておくと、
いずれは神経や精神に影響を及ぼすケースもあるのです。
【気づきにくい「神経」や「メンタル」へのリスク】
筋肉の緊張や運動不足からくる痛みやこりをそのままにしておくと、
いったいどんな影響があるのでしょうか。
たとえば、呼吸が浅くなることで頭痛やめまいが起きます。
食欲不振に陥ったり、吐き気や全身の倦怠感、不眠などを
招いたりすることも少なくありません。
また、特に気をつけたいのがメンタル面への影響です。
痛みやこりが内因的なストレスとなって、
メンタルに悪影響を及ぼし、うつなどの症状が出ている人も目立っています。
加えて、コロナ禍の漠然とした不安感やストレスも影響し、
さらにメンタルのコンディションを悪化させているケースもあります。
実際に、筆者の病院に首や肩の痛みで来院される人によくお話を聞いてみると、
「心療内科にも通院しています」「精神科で薬をもらっています」
という方も少なくありません。
特に気をつけていただきたいのが、女性ホルモンのバランスが崩れやすく、
更年期障害に悩まされやすい40〜50代の女性です。
更年期障害の主症状のひとつに「うつ」や「落ち込み」がありますが、
ホルモンバランスの乱れからくるうつ症状に
運動不足や筋肉の緊張からくるメンタル面の不調が重なって、
ますます調子を崩してしまう可能性があるのです。
痛みが慢性化すると抜け出せない「負のサイクル」
そしてもうひとつ、痛みを放置するリスクに、
「慢性疼痛」という“負のサイクル”に陥ってしまうことが挙げられます。
慢性的に首や肩、腰などに痛みを抱えていると、
どうしても「痛みをなくしてやろう」と思いがちです。
それはいってみれば痛みを敵視するようなもので、
なんとかして痛みを根絶しようと身体が反応し、頑張りすぎてしまうのです。
たしかに、身体のどこかに痛みがあると生活の質は著しく下がりますし、
なにをしていても痛みが気になって集中できないこともあるでしょう。
しかし、全神経を痛みに集中させてしまうと、
少しの痛みでも敏感に反応し「この痛みをなくさなければ」と
精神的にもつらい状況になりがちです。
これが、慢性疼痛による負のサイクルです。
いったんこの状態に巻き込まれてしまうと、
なかなかサイクルから抜け出すのは困難になりますし、
場合によっては心療内科や精神科などの助けを借りなければならないケースも出てきます。
【まずはストレッチ!改善しなければ診療所の受診を】
それではいったい、こうした事態にならないためにはどうしたらいいのでしょうか。
まずは当然のことですが、運動習慣を身につけることです。
コロナ禍の運動不足により首や肩、腰の不調が起こっているのですから、
それらを解消するには運動することが1番。
まずは簡単なラジオ体操やストレッチ、ウォーキング程度で十分です。
できれば、ラジオ体操やストレッチは毎日の習慣にし、
デスクワークの合間に体をほぐすことを意識して、
それに加えて週2〜3回は30分程度の運動をするように心がけましょう。
それから、筆者も実際に使っていますが、
筋膜を柔らかくほぐしてくれる
「フォームローラー(筋膜リリースローラー)」はおすすめです。
体のこりを感じる部分にローラーを当ててころころ転がし、
体重を利用しながらこりをほぐしていくものですが、
身体が楽になっていくだけでなく、適度にリラックス効果もあります。
このような手軽に取り入れられるアイテムを活用するのもいいでしょう。
こういった生活改善をしたうえで、
それでも症状が改善しなければ、専門医の診察を受けてください。
特に、痛みやこりに加えて、麻痺や痺れなどの症状が出ている場合は要注意。
もしかしたら、「頸椎症」など他の疾患が隠れているかもしれません。
また、すでに痛みがひどく、日常生活に支障が出ているという場合は、
自己判断せず、気になる症状が長引くようなら早めに医師の診察を受けましょう。
「新しい生活様式」の普及にともなって、
心や身体の不調を訴える人が増えているのも事実です。
実際、肩こりなどの痛みを抱えて仕事が捗らないことで生じる労働損失は、
病欠コストより大きいともいわれています。
これまで以上に「自分の健康は自分で守る」という意識を持ち、
改めて日常生活を見直すこと、
そして、必要に応じて医師の診察を仰ぐことを考えてみましょう。
今回は、横浜町田関節脊椎病院の越宗幸一郎院長の記事を
一部引用させていただきました。
元記事はこちら→恐ろしい…コロナ禍でひそかに増加した「原因不明」の首や肩の痛み【専門医が解説】 | 幻冬舎ゴールドオンライン (gentosha-go.com)越宗 幸一郎
横浜町田関節脊椎病院 院長
川崎医科大学卒業。
■専門領域
・整形外科一般
・脊椎脊髄外科
・最小侵襲脊椎安定術(MISt)■専門医・指導医・所属学会
・日本整形外科学会認定整形外科専門医
・日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
・日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医
・日本整形外科学会
・日本低侵襲脊椎外科学会
・最小侵襲脊椎治療学会
・日本脊椎インストゥルメンテーション学会
・日本側弯症学会
・中四国MISt研究会
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